巖谷國士×斎藤綾子★対談講演「映像に見る<忠臣蔵>」@港区高輪支所

12月14日に語られた「忠臣蔵」!

12月14日赤穂浪士討ち入りの日に、斎藤綾子先生をゲストに迎え、★先生が「忠臣蔵」について講演をするという稀にみるイヴェントがありました! 講演会場そばの泉岳寺では、義士祭の真っただ中です。

 

★先生はまず、元禄時代の江戸にあらわれた多くの傑出した芸術家、文化人、政治家などを紹介して、

「忠臣蔵」の時代の江戸がどんな世界だったのか、観客の目前に描いてくださいます。

粋で派手でかっこいい町人文化に魅せられ、徳川綱吉の意外な面や、オープンな政治に驚きの声があがります。

 

続いて明治、昭和、現在の泉岳寺をめぐる写真を見せながら、赤穂の塩について、大石内蔵助良雄の扮装について、四十七士自刃の跡、それぞれの義士の墓やエピソード、吉良上野介義央の首を洗った井戸、明治天皇も江戸城に入る前に泉岳寺に詣ったこと……などなどについて語られます。

圧巻は、この一大スペクタクル……未明に吉良の首をとった四十七士が、両国は本所松坂町にあった吉良の屋敷から高輪の泉岳寺まで12kmを練り歩き、当時、世界最大級の100万人都市であった江戸庶民の熱狂のなか迎えられたこと! これを大デモ行進(ページェント)だったととらえる★先生の視点に、はっとする観客たち。★先生もその場にいたのでは?と思うほど、臨場感あるお話にわたしたちも興奮してしまいます。

 

そして斎藤先生とともに、「忠臣蔵」が無数の歌舞伎、絵本、小説、ドラマや映画で語られることや、なぜ「日本人」に受けるのか、その見せ場などについて実際の映像の対比も交えながら、あらゆる視点から客観的にひもといていきます。たとえば、大石と立花左近が相対するシーンのように、語らずして語るような「型」があること、そこに観客とのコミュニケーションを誘っていること。江戸と赤穂、(両国)橋を挟んだ江戸のこちらとむこう、中央と地方、のように東と西を横断する物語であること。権力への反逆と忠義、組織と個人など、正反対の要素が成りたつこと。女性たちの「忠臣蔵」。計画を知っていながらあえて取り締まらない政治のあり方。同時代のもうひとつの大物語「水戸黄門」とのちがい。戦前、戦中、戦後と、50年代、60年代……時代によって変化するせりふや内容。そのほかそのほか……

 

「忠臣蔵」がその時代ごとに、あらゆる物語の受け皿となっていたことが浮き彫りになります。役者たち、映画のセットやカメラワーク(千恵蔵と阪妻の対決、溝口健二の撮影、河原崎長十郎の大石など、ほんとにすごかった!)についても時代背景や人物の生い立ちから詳しく語ってくださる★先生。

 

ここまで「忠臣蔵」がおもしろく、かつ元禄時代から現代日本の社会まで見とおす客観的な視点から語られたことが今まであったでしょうか? 本当に画期的なすばらしいご講演でした!

(okj)