巖谷國士★講演「コラージュとは何か」@LIBRAIRIE6/シス書店 

今日3月16日は恵比寿のリブレリーシスで開催中の「ローレンス・ジョーダンとコラージュ」展に伴う巖谷國士★講演「コラージュとは何か」がありました。雪で延期になっていたものです。
錬金術的で本質的な講演でした!
ローレンス(ラリー)・ジョーダンは一時、晩年のジョゼフ・コーネルの助手をしていた西海岸のアーティストで、自らコラージュやアニメーションを手掛けています(シスにて23日までみられます)。
まず、いまパリで展覧会をやっているギュスーヴ・ドレの版画作品を、ジョーダンがコラージュ映画に使っていることや、ニューヨークのコーネルとのひそかなつながり、そして地震地帯カリフォルニアの風土や歴史などが、このアーティストを読む鍵として語られました!
同じくパリの「シュルレアリスムとオブジェ」展との関連から、レディメイドの結合によるコラージュのオブジェ性についても。
コーネルという人は古い映画資料やフィルムや19世紀のバレエやオペラの図版資料、挿絵本やちょっとした新聞雑誌の記事などを、愛するレディメイドオブジェとしてを厖大に収集していて、シュルレアリスムと出会ってからは、エルンストに倣うコラージュ、そして箱のアサンブラージュやコラージュ映画をつくるようになりました。
専門的な美術教育はいっさい受けておらず、生涯デッサンも絵も描きませんでした。これは岡上淑子などとも類似しています。コラージュは技法や手法としてではなく、偶然の出会いから始まるのです。
何よりも、コラージュの出発をエルンストに見る★先生の説は刺激的でした!
エルンストの特徴は、何かを意図していないこと・イメージが自然に自発的に結びつく偶然の出会いによる新しいイメージの誕生=視覚的錬金術であること・大戦の廃墟という死(鋏による切断)からの再生(貼り合わせ)を体現したこと・壮大な物語の萌芽になること、等々にあるというお話で、こう並べただけでもワクワクしますね。
彼自身も美術学校の専門教育を受けていなかったエルンストが、ヨーロッパの伝統的な画法を脱して、20世紀美術を切り開いた過程と意味がよくわかりました。彼のコラージュはピカソのパピエコレやシュヴィッタースのフォトモンタージュとはまったく違うのです。
その他、コラージュの材料となる版画や写真やカタログや、初期映画のフィルムといった大衆文化のプールの発見、個人の郷愁にとどまらぬ本質的なノスタルジア(エルンストやコーネルや岡上淑子や野中ユリのコラージュにも、ジョーダンのアニメーションにもそれがあります)など、私には衝撃的なお話の連続でした。

そのすべてを報告はできませんが、今日の講演はまさしく言葉の錬金術。そこにキラキラと輝いていた時間こそ、先生からの贈り物だと感じました。先生、ありがとうございました。
そしてこのような機会を作ってくださったシスのささきさん、参加なさった方々もありがとうございます。 
食事会も楽しかったです~。