巖谷國士★講演 「アール・ブリュット、〈境界〉なき世界へ」@ギャルリー宮脇

金沢で館長をはじめ観衆の心を揺さぶった★先生は、京都でもわたしたちのハートを冒頭からがっちりとらえて最後まで離しませんでした!
 桑原敏郎さん、アンティエ・グメルスさん、塔本シスコさんをはじめとした「〈境界〉なき世界」に遊ぶアーティストたちの奇跡のような創造活動を具体的に紹介しながら、アール・ブリュットとは何かをわかりやすく説明してくださいました。アール・ブリュットとは通常思われているように、わたしたちの社会から切り離された特殊な環境で創作する人々の作品のことではありません。創作する喜びに身をゆだねて作り出された作品のことです。ギャルリー宮脇に押し寄せた観衆は漫画家の卵をはじめ、ものをつくる観衆が多かったようで、わたしたちはみんなアール・ブリュットを作れるのだという先生のお話を聞きながら、何度も何度も深く深くうなずいていました。ただただ夢中になってものを作ることの喜びのために行う創造活動は、まさにまだカットされていな原石のような輝きをもっています。「わたしたちの内なる狂気」を解放するために無償の行為を行っている人々の作品に囲まれながら先生のお話を聞くうちに、わたしたちは心も身体も芯から解きほぐされていきました。
 「アール・ブリュット」を時間的、「アウトサイダー・アート」を空間的な概念であると看破された先生に対して、興奮のあまり拍手をおくりたくなります。まさに目からうろこのお話ばかりが続きました。境界ばかり作りだす今の社会に(壁の世界の『進撃の巨人』が流行している日本に)必要なのは「壁の思考」ではなく、壁をなくす思考です。壁や境界がつくられた政治的、社会学的な背景を理解しながらも、それをとりのぞく必要性をあらためて感じました。
 講演の翌日は、★先生、桑原先生と愉快な仲間たちで相国寺に行きました。若冲や抱一の作品には聖なるものにつながるような、自由な遊びばかりがありました。若冲の鶏をみたあと、鳥岩楼の親子丼を食べながら、すべてが繋がっているという至福に浸りました。
(AH)