待ちに待った、先週から引きつづきの、第2回目の★講演です。
今回は近代の観光から、シュルレアリスムの時代、日本列島の自然・災害まで。映像を駆使しながら一気に駆けぬける、めくるめく「線」の、人生の、20世紀に生きる私たちの「旅」という体験!
旅(=journey 日々の体験、人生航路)も人生も「線」であり、すべては時間の体験です。
「観光ポイント」ばかりを紹介するガイドブックの「点」ばかりを追いかける観光では、点と点との間に大事なものがあっても見過ごしてしまう……つまり「点」だけで構成された人生では、点に向かうばかりの努力で終わってしまう、という指摘にはっとします。
旅の本質は、別の土地へ行って多様性に出会う驚異と喜びですが、そこには同時に偏見や異質のものを排除するという危険があることも指摘。もともと同一(ホモサピエンスのホモは「同一」のこと)の起源から、地球上の土地土地に応じて多様性が生まれたのだから、人間同士に違いがあっても差別すべきではない、それは旅が教えてくれることだとおっしゃいます。
狩猟・採集という旅の生活をしていた人類が定住し、都市で文明を営むようになると、やがて壁を作り、「内側」に安定したユートピア世界を築こうとする。
だからこそ、外(=エグゾ)へと向かう人間の心があり、エグゾティスムを「異国情緒」と訳すのはおかしいとおっしゃいます。外とは「国」ではなく、漠然とした、見たこともない世界であり、その異郷への思いがしだいに旅の原動力となる。
そもそも「国」=近代国家は、壁を作ってさまざまな多様性を「画一性」のなかに閉じこめようとするもので、日本列島においても、決して「単一民族」などではないと指摘します。
外へ向かう心が呼びおこす、発見と驚異と夢想……先週に引きつづき、映像を示しながら、時代をおって展開する旅また旅……の数々。
オリエンタリズム、オリエント(東方)とヨーロッパ(西欧)の関係、ドラクロワのモロッコでの光と色の発見、アングルの影響、オリエント急行とアールヌーヴォー都市、フローベールの言及するフーリエ世界、観光の大衆化による近郊への旅、バルビゾン派、写真と絵画の関係、鉄道とポスターと印象派とファッション、アンリ・ルソーの特別な旅情、リシュボア(リスボン)の繁栄と大地震による壊滅の歴史、絵葉書とシュルレアリストの関係、アメリカ新大陸の驚異、植民地帝国主義が背景にある万国博、ジュール・ヴェルヌ、ジャポニスム、ゴーギャンやランボーの壮大な旅、赤ずきんちゃんやアリスやアンデルセンやフーリエの驚異の世界、シュルレアリストの日常の旅・亡命の旅・パラレルワールドへの旅、北斎の生命・自然の運動表現の驚異、日本列島の災害の重要な記録・記憶……
とてもここですべてを書ききれないので、この展覧会のさらなる外へと連れだしてくれる★先生の今回のご著書
『旅と芸術 発見・驚異・夢想』をお読みになり、どうぞすみずみまで旅してください! 世界の重層化・類推につぐ類推・人生の旅、ここに開かれる……!
(okj)
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