巖谷國士★対談 ルイス・ブニュエル「皆殺しの天使」@シアターイメージフォーラム

ルイス・ブニュエル『皆殺しの天使』を巖谷國士先生が、四方田先生との対談をまじえながら語ってくださいました!
たんなる不条理映画でもパニック映画でもなく、現実として展開していくブニュエル一流のシュルレアリスムが明らかに…!
上流階級の登場人物たちが自分から出ていかないことを指摘し、この映画の寓話性をもとらえて、皆殺しにされるのは誰か?天使とは何か?を考えていきます。映画の中でブニュエルが笑っている数々のものや、人物、またブニュエルが好んだ作家や、ブニュエルのカトリック的側面にも光をあてて行きます。
閉ざされた部屋の中に実は外の世界があること、ラストシーンの町の暴動は実は最初からずっと進行している可能性、などもほのめかします。

劇中の女性が、ほかのブニュエル映画の女性ともアナロジーをなしたり、ほかの映画のタイトルになっていることばがセリフとして出てくることを今回発見する巖谷先生……「私たちは忘れられた人々だ」……長期間上映禁止になることもよくあったブニュエルの映画、忘れられたころにまたやってきては、新たにそのときの映画になるとおっしゃいます。

映画そのものが皆殺しの天使と見ることもでき、ブニュエルの自画像といえるとも切りこむ巖谷先生。映画の中でほかの映画も回帰し、結果的に伏線があらわになることも示してくださり、わたしたちもふたたび映画に出会いなおしてしまいます。
ブニュエルの客観性、いつの時代にも観客を殺しうるアクチュアルさ。巖谷先生の鋭いまなざしと類推の視点で、強度に映画を体験してしまう、ものすごい時間でした!(okj)