巖谷國士★講演「今こそ澁澤龍彦を読み、語る」@京都・恵文社一乗寺店


巌谷先生が京都・恵文社に颯爽と登場し、恵文社のリクエストに応えて澁澤龍彦の「すがお」について語ってくれました。『澁澤龍彦論コレクション』全5巻の完成記念講演です。先生宛の手紙や絵葉書、晩年に声を失ってからの筆談メモなど(未公開のものもふくむ)に囲まれて先生のお話を伺うのは、これ以上ない贅沢でした。

先生のお話から、人間的に裏表のない、こだわりも思い入れもないあっけらかんとした澁澤さんの姿が清々しく浮かび上がります。その裏のない「すがお」が文学と通底していると看破する巌谷先生。アナロジーによって過去の説話やお話をコラージュして作品をつくる澁澤さんは、自分の情念やらを作品から解放する、日本では珍しい超モダンなひとであるというご指摘は、これ以外考えられないというくらい的をえています。こういう超モダンな澁澤さんを語れるのは先生しかいない!と再認識しました。

会場には漫画家や三島研究者、イタリア文学者、『高岡親王航海記』の人形劇関係者、編集者、京都新聞の記者、画廊主、すてきなマダム、核表象の研究者、大学院生など様々なひとがいましたが、先生が澁澤さんの「わたし」を中心に宇宙のあるクルミに譬えたり、玉虫三郎の構想を説明したりする間、みなさん、ひたすら頷いたり、涙したり、身もだえたりしていました。巌谷先生が澁澤さんから受けとったものが数え切れないほどあることもまた、明らかになりました。

サイン会のあとは近くのイタリアンのお店で食事をしました。昔の東京、学問=科学とテクノロジーの違い、ゼミの話や即答することの重要性やらの話で盛り上がりました。

先生、京都に来てくださり、本当にありがとうございました。日々感じないことを感じたり、別の現実を生きたりするとっても刺激的な時間でした。
AH