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巖谷國士★講義 第2回「新★ぜみ」の報告

「25」まで数え、あらゆる猛威をふるいつくした大台風群が過ぎさって、フェーン現象で、季節はずれの夏日となった本日10月7日(日)、第2回「新★ぜみ」が明治学院大学内某所にて開催されました。

前回同様、第2回「新★ぜみ」でも、旅から戻ったばかりの★先生に、約1ヶ月にわたる旅の成果を、たっぷりお話しいただきました。

今年9月の★先生の旅は、フランス・ブルゴーニュを経て、南イタリアのカンパーニャ地方(ナポリ他)とプーリア地方(レッチェ他)とをめぐるものでした。ーー旅の経過と訪ねた先々での写真は、都度、★先生がTwitter(巖谷國士:@papi188920)上に載せてくださっていたので、そこを覗けば、なんとなく、日本列島で台風被害に(のみならず人災にも!)遭っている私たちでも、一緒に旅をしているような、開放的な気分になれたものですが……
 
今日の講義では、その写真を、手元のスマートフォンで繰りながら、旅から帰還したばかりのオデュッセウス(いやプリニウスか?)に、「イタリアをめぐる話・地中海世界の話」あるいは「真実・本当の話」をしていただきました。
 
またぜみのはじめには、★先生からのプレゼントとして、明治学院大学図書館から刊行されたばかりの『絵本とメルヘン・コレクション蔵書目録』と北海道をめぐる話(10月号は「室蘭」)の掲載された『開発こうほう』が配られて、近年の★先生の多様なお仕事が、旅が、講義が、ずっと連続していることを知らされます。 
 
大学図書館の蔵書も、北海道という大地も、日本という「くに」も、イタリアという「くに」も、地中海を囲む沿岸域のさまざまな都市も、「それぞれの独自性と多様性をそなえているべきものだ」(巖谷國士著『絵本とメルヘン・コレクション目録』より)ーーという★先生の理念が、つねに「こだま」するような講義でした。
 
そこで、第2回「新★ぜみ」の報告に代えて、今回の旅の同行者でもあったokjに、講義の「概略(講義中に出てきた心震わせるワード!)」を、あわせて、参加者からの「感想」を、一部、匿名にてご紹介させていただきます。

【概略】
帰国直後の★先生から語られた超ライヴ講義「イタリアとは何か、地中海とは何か」に高揚しています!

9月、★先生がブルゴーニュへ発ったのちに、ナポリ王国に入城されるのを追いかけて、プーリアへの旅に同行させていただきました。
 
近代国家としての「イタリア」が吹き飛ぶような、めくるめくマグナ・グラエキア世界。
 
さらに古代へとさかのぼる、超他民族・地中海世界ーー古代ギリシア、ミケーネ文明、クレタ文明、フェニキア人、イタロ人、リグリア人からヴェネト人、メッサピ人やイルリア人、シクロ人まで。たくさんの都市国家、スパルタ人やアルバニア人。北のゲルマンに対するロンゴバルト族や東西ゴート族。ノルマン人やアラブ人、シャルルマーニュやアンジュー家、神聖ローマ帝国やスペイン王家も入ってくる、あらゆるものが混じりあう世界。

地中海沿岸地方は一つの世界と捉えられる!
 
ビザンチン文化もロマネスクも、バロックも……何もかもがその土地の空気にさらされて、独自の発達を遂げる。レッチェのバロックは、反宗教改革としてのそれとはもはや別次元のもの! 地産の石灰岩レッチェ石による、舞台装置のような超バロック建築の大盤振舞い。地中海からブリンディシに上陸した人々は、ローマを目指してアッピア街道をひた走る。ハドリアヌスやネローネ、皇帝たちの夢と記憶と遺跡の数々ーー。

クーマの巫女。温泉と神殿と神託。アルタムーラの閉ざされた中庭と呼応する「地中海、そこから開かれる扉」というアンゲロプロスの言葉。

リグリア、ティレニア、イオニア、アドリアという4つの海に囲まれ、北部にアルプス山脈をいただき、中央部をアペニン山脈が走る山がちな、限られた平野(北部とプーリアにあるばかり)しかもたない半島ーーイタリア。
 
ここに、今回の旅の行程を記載しておきます。★先生が用意・展開してくださった、南イタリアをめぐる旅の驚異と類推の魔法(ツイッター上に公開中)で、ぜひみなさんも一緒に旅をしましょう!
 
カゼルタ 〜 レッチェ 〜 ガッリーポリ 〜 ブリンディシ 〜 ターラント 〜 マルティーナ・フランカ 〜 アルベロベッロ 〜 アルタムーラ 〜 ナポリ 〜 クーマ 〜 ポッツォーリ 〜 カプリ
 
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さてここからは第2回参加者よりお寄せいただきました「感想」を一部ご紹介します。
 
【感想】
◉まず、非売品との『絵本とメルヘン』の本をいただいて、とても嬉しいです。大切にさせていただきます。
大学図書館の蔵書の選び方から始まった、先生の今回のご講義、私が、以来ゼミに加えていただくご縁となったのは絵本学会主催の講演がきっかけでした。イタリアには一度行ってみたいと思いながら、今まで実現しておらず、Twitterにある先生の写真を見ながら、詳しい話をお聞きかせいただいた。イタリア各地の様子が実際に目に見えるような時間でした。先生ありがとうございました。新★ぜみの開催に向け、幹事の皆様ありがとうございました。

◉あらためて「くに」がもたらす豊さを、★先生の映像をともなう講義から実感する。レッチェLecceに旅してみたい。クーマCumaの洞窟、三角のStereonomieを通る神託の!温泉と神殿と神託の関係性は感慨深い。

◉「地中海世界」のお話、おもしろかったです!例えば、Twitterに先生がアップされた素晴らしい写真の中でも、特に気になっていた「アルタムーラ」の街。「修道院の中庭のよう」な「閉ざされた庭」はアラブの影響だというお話。深く納得。「アルベロベッロ」の教会の写真も感動しました!あちこち今すぐ行きたくなりました。★先生のお話は、やはり特別です。

◉フェニキア、古代ローマ、神聖ローマ帝国、etc。学生の頃に勉強した世界史上の懐かしい名前です。しかも面白くて楽しい授業でした。ありがとうございました。

◉古代ギリシアのお話、すばらしかった。ターラント、アルベロベッロ、レッチェ、行きたくなりました。民族の話もよかった。アンゲロプロスの言葉も良かった~!ありがとうございました。また聴きたいです!

◉Méditerranée 地中海の周辺域がひとつの世界。多様な民族が長い歴史の中で交流し、多様な文化が紡がれた、ということ。その中では、多様な自発的意見をもつ人々が存在する、という当たり前の魅力!
次回をますます楽しみにしています。
 
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報告の最後に……

次回のmont analogue★事務局の主催する、第3回「新★ぜみ」は12月あるいは2019年1月を予定しています。また詳細が決まりましたら、随時ご案内してゆく所存です。